ハーモニクス・ヒーリング

(New Rudie's Clubより)

STEP1 調和の世界を生きる

森田玄

1 生命の調和法則に従って

 生きているというのは、考えてみると本当に不思議なことです。私たちのからだは> 何もしなくても、朝になるとちゃんと目を覚ましてくれるし、日常の行動を差し支えなくおこなえるように自然に動いてくれます。どうしてからだがそんなことができるのかは、今の科学のレベルでは殆どというか全くわかっいません。

 体温や呼吸、心拍、脈拍などをどうやっていつもモニターし、一定に保っているのか。そうしたからだの基本的メカニズムに関しても全くわかっていません。

 ただそのメカニズムに「ホメオスタシス」という名がつけられているだけに過ぎません。いのちそのものがミステリーなのです。

 人類は長い間自分のかただを探求することより、外のもの、自然を探求することに多大な知恵とエネルギーを費やしてきました。それは、からだは神聖なもの、という宗教的理由もあったでしょう。そのお陰で自然科学は目を見張る業績を成し遂げ、自然界の成り立ちや仕組みについてはだいぶ解明されてきました。その結果わかったことは、自然の仕組みの素晴らしさと緻密性です。自然は、あるいは宇宙はと言ってもいいでしょうが、ある法則に従ってできているという事 実です。

 この世界は偶然にデタラメに出来上がっているのではなく、想像もつかないような綿密に計画されたデザインに従って存在しているのです。生き物の世界も同じです。いのちはみな勝手にいきているのではありません。おたまじゃくしはちゃんとカエルになるし、毎年春になれば桜が咲くのです。あらゆる生き物はあるルールに従って生きていることは間違いありません。

 そのルール、法則が何なのか、何がいのちを作っているのかを問うのは、私の能力の範囲をはるかに越えますので、偉大な思想家や宗教家に任せましょう。ここで重要な事は、いのちや生きることの本質や理由を問うことではなくて、生きること、すなわちいのちには方向がある、という事実なのです。

 生命法則があるなら、それには生命の方向があるはずです。

 生き物はみなデタラメな方向に生きているのではありません。

 植物は種から芽が出て、葉に成長し、太陽の方向に伸びていきます。精子と卵子が受精して胎児になり、生まれて成長して大人になります。太陽をわざわざ避けて生きる植物はいませんし、大人から赤ちゃんに戻った人間などというものは、いまだかつて聞いたことがありません。生きるとはある方向に向かう前進運動のことなのです。その方向とは何なのでしょう?

 私たちが時々古くなった食べ物を食べてお腹をこわす例を考えてみましょう。お腹をこわすような毒性を持つバクテリア(病原菌)が腸の中に入ってくると、腸のひだに無数に存在するセンサー細胞という監視役がいち早くそのバクテリアを見つけ、腸内神経システムを通じてアラーム(警告)を発します。すると、これまた腸のひだに無数に存在する消防隊のような細胞が一斉に多量の水を放出して、バクテリアをからだの外に洗い流してしまいます。この一連の腸の働きが「下痢」という現象です。下痢そのものはありがたくない症状ですが、そのお陰でからだは悪い菌による侵入から守られているのです。下痢はからだが正常に働いているリ拠です。このようなからだを守る様々な防衛システムが体中に張り巡らされています。

 このシステムが免疫機能です。

 また、体温や心拍数、脈、呼吸、発汗などの基本的なからだのメカニズムを常にモニターし、一定の状態に保っているシステムをホメオスタシス(体内恒常性維持機能)といいます。

 私たちが意識しようがしまいが24時間休みなく、これらのシステムが働き、からだをもっとも良い状態にしてくれているのです。つまり、生きるということは、常に自分にとってもっとも心地よい、安全な状態に向かってからだが働いている現象です。それが生命の法則です。

 からだのあらゆる部分や細胞が全体として常に最高のバランスを保つように設計されているのです。私たちはそのように調和やバランスが保たれた状態を「気持ちいい」とか「快い」と感じます。生きるとは、常に秩序と調和(ハーモニクス)の方向にからだが進むことです。不快や危険を避けてもっとも快い状態に保つのが、生命現象です。何がそうさせているのか、そうしているのかはわかりませんが、不思議としか言いようのない、ありがたい力・エネルギーがからだにあって、常にからセを調和の方向に生きるように導いています。これを自然治癒力ともいいます。私は生命の調和法則と呼んでいます。

 自然界を見て下さい。木や草や花、動物や虫たちはみな自由に楽しそうに調和して生きています。不快にいやいやながら生きているものはいません。ハエや蚊がノイローゼになったり、野生動物が自殺することは考えられません。あらゆる生き物は、それなりの生き方で、自由に気持ち良く、調和して生きています。それは世界(宇宙)が、あるいは自然が、常に調和しているからです。この宇宙を作っているエネルギーそのものが、調和・秩序であり、バランスであり、快なのです。ですからからだが宇宙と一体となったとき、快く感じるのです。というよりも、私たちの存在(からだとこころ)は宇宙の一部なのですから、もともと調和であり快なのです。本来、そのようにできているのです。いのちの本来の姿は、調和であり快です。不快な状態(悩み、病気、心配)というのは、本来のいのちの姿ではないのです。いのちのあるがままの姿を愛と表現してもいいでしょう。それでは、本来快のいのちがどうして不快になってしまったのでしょうか?それはこれから話しを進めていきましょう。

 まず、みなさんに知って欲しいことは、生命の調和法則に従って心とからだを気持ち良い方向に持っていけば、生命エネルギー(自然治癒力)がからだの内外から働いて、不快な状態から本来の状態(健康)にしてくれるということです。