疑惑の2004米大統領選挙 不正投票で騒然とするアメリカ市民と沈黙する大手メディア 〜 きくちゆみ 〜 | |
カナダにアメリカから移住希望者が殺到? |
11月2日に行われた米大統領選挙の開票が終わり、ブッシュの再選が報道されると、カナダ移民局のホームページへのアクセス数が6倍に急増した。「もう4年もブッシュ政権下のアメリカに住みたくない」と、多くのアメリカ人がカナダへの移住を考えはじめたため、といわれている。 またケリーが勝った青い州(Blue States)では、アメリカから分離しよう、という運動が始まった。極めつけは「United States of Canadaを創って独立しよう」という呼びかけだ。「カリフォルニアは合衆国からの離脱を検討すべき」と主張している大学新聞もある。冗談とも本気とも取れる情報が、今もネット上を飛び交っている。 sorryeverybody.com というサイトも傑作だ。こんな結果になってごめんなさい、とアメリカ人が次々とメッセージつきで謝罪している。延々と続く彼らの顔とメッセージを見て、最初は笑っていたのだが、次第になんだか泣けてきてしまった。 |
グレッグ・パラストの衝撃のメール |
疑惑の始まりは、ブッシュ再選が伝えられる直前に届いた1通の電子メールだった。タイトルは「ケリーが勝っていた」。差出人のグレッグ・パラストは2000年の大統領選挙の不正について徹底的な調査報道をした辣腕ジャーナリストで、著作『金で買えるアメリカ民主主義』は日本を含む世界各地でベストセラーになった。彼によれば、前回のフロリダ州で勝利したのはゴアで、不正がなければゴア大統領が誕生していた、という。 今回の選挙ではフロリダはもちろん、オハイオ、ニューメキシコ、ニューハンプシャー、ネバダなど複数の州で同様の不正がより周到に行われた、というのだ。 大統領選挙人の最終獲得数は、ブッシュ286対ケリー252だった。しかしオハイオ州の20人がケリー票になれば、ブッシュ266対ケリー272となり、結果は逆転する。 私は徹夜で開票結果を見守っていた。当初出口調査で優勢が伝えられていたケリーが、後半になって敗北の色が濃くなってきた。そんなときに入ってきたパラストのメールは、要約するとこんな内容だ。 「ケリーが勝った。すべての票が正しく数えられたならば。オハイオとニューメキシコはケリーが取った。オハイオの出口調査では、女性票はケリー53%に対してブッシュが47%。男性票もケリー51%対ブッシュ49%だった。出口調査は正確。出口調査と選挙結果が食い違っているのは、数えられなかった票による。フロリダで起きたことが今回はより綿密に、周到に繰り返された。全体でおよそ3%の票が無効とされ、オハイオの選挙は投票者によってではなく、無効票によって決定された。問題は無効にされた票は民主党支持者が多い黒人票やマイノリティ票に集中していること。」 不可解なのは、選挙不正疑惑に関して大手メディアが沈黙していることだ。不正投票の具体例が次々と報告がされるのはネット上だけで、それに触れた報道は殆どない。肝心のオハイオ州は暫定票のカウントが始まるのは11月13日からで、まだ決着していないのに、ケリーは早々と敗北宣言をしてしまった。最初から勝つ気がなかったのか、とケリー支持者からは怒りの声があがっている。 |
反撃するアメリカ市民とネットメディア |
しかしアメリカ市民はあきらめていない。2000年に続き、またもや不正選挙でブッシュ政権になるのではたまらない、と人々は動き始めた。「まだあきらめるのは早い。オハイオの開票結果は決まってない。それまでがんばろう」「がっくりしている暇はない。イラクの軍隊をアメリカに戻せるよう、動き始めよう」「今こそ、911事件を明るみに出そう。911 In Plane Site(注:日本語版は「911 ボーイングを捜せ」)をアメリカ中に広めよう」という投稿が相次いだ。 中には「ブッシュの勝利を知ったとたんに、私の子は泣き出した。ブッシュがこの国の若者に何をしようとしているのか子どもたちは直感で知っている」と徴兵制の復活を心配する母親の投稿もあった。 ブッシュはオハイオ州を136,483票差で制した。しかし廃棄票92,672票と暫定票155,000票を加えれば、247,672票になる。これらに黒人票やマイノリティ票が集中していた、というパラストの指摘が本当ならば、結果は逆転する可能性がある。暫定票の集計が終了するのは12月1日で、オハイオの最終結果は12月3日に確定する。この結果次第では、前代未聞のことが起こるかもしない。 ケリーと民主党の大統領指名を争ったデニス・クシニッチ下院議員は、オハイオ州のすべての票の数えなおしを要求している。選挙疑惑を耳にした他の下院議員達も、会計検査院に今回の大統領選挙の調査を依頼した。緑の党はオハイオ州の票の数えなおしに必要な資金の12万ドルの募金活動を始め、11月15日現在すでに8万ドルを集めた。ラルフ・ネーダーも同様の動きをニューハンプシャー州などで始めた。またオハイオ州の超党派の動きとして、複数の団体が不正投票に関する公聴会を11月15日に開催した。 そんな展開の中、大手メディアではMSNBCのキース・オーバマンが、自分のテレビ番組「カウントダウン」で「不正選挙の可能性」の特番を組み、口火を切った。一方でABC放送は「小さなトラブルはあったが大きな問題はない」と大統領選挙を総括した。出口調査と実際の票の異常な差については、「実際の数字を信頼すべき」という大手シンクタンク「アメリカン・エンタープライズ研究所(AEI)」のコメントを紹介し、出口調査の信頼性を否定した。因みにネオコン勢力のチェイニーやパールはAEI出身だ。 1996年まで大統領選挙の出口調査は正確だった。大手マスコミは出口調査の結果で勝利者を決めていた。では変わったのは何か。疑惑が集中するのは、2000年の選挙から導入された電子投票システムだ。 今回の選挙で、電子投票のトラブル報告は千件を越えた。デンマーク他ヨーロッパから来た選挙監視団がオハイオ、フロリダなど決戦州で見学を拒否されたことも報告されている。ヨーロッパ監視団は「アメリカの選挙はカザフスタンより密室的で、電子投票機はベネズエラよりもトラブル対策が未熟」と語った。また2000年同様、投票所前で嫌がらせをされ、投票できなかった大勢のマイノリティ有権者がいた。彼らの殆どは民主党支持者だ。 今回の選挙では前回よりさらに多くの電子投票機が導入され、全投票の8割を2社が独占し、ディーボールド社とES&S社製の機械が使われた。ディーボールド社の副社長とES&S社の社長は兄弟で、キリスト教原理主義者であることも知られている。オハイオ州に本社があるディーボールド社の社長は、選挙前「ブッシュに勝利をもたらすよう協力をする」と表明していた。一方、ES&S社の大株主のチャック・ヘーゲルは共和党上院議員。両社とも共和党との深い結びつきがある。 今回の大量導入されたタッチ・スクリーン方式の電子投票機の場合、投票機内部以外には記録が残らないので、後から数え直しができない。今回の選挙では3割がタッチ・スクリーン方式だった。 興味深いのは、紙などの記録が残る電子投票機が使われた選挙区では、出口調査と実際の結果とは、1%以下の誤差で一致していた。しかし、タッチ・スクリーン方式の電子投票機が使われたオハイオやフロリダの選挙区では出口調査の結果が大きく食い違った(図表1:別メールで送信済み)。 オハイオ州フランクリン郡のある選挙区では有権者登録数が638しかないのに、ブッシュの得票数が4258票でケリーが260票だった。オハイオでは同様の例が29の選挙区で報告されている。 記録用紙が残らず、数え直しが効かない電子投票機の場合、不正を行なうことが容易であることは従来から指摘されていた。結局、コンピューターは少しソフトを書き換えれば結果はどのようにでもできる。 ジョンズ・ホプキンス大学の情報学の研究者らは、電子投票は不正使用が可能、という解析結果を2003年以来、報告している。選挙で不正が行なわれること自体、あってはならないが、電子投票機の導入以来、それが技術的に容易になっている。 |
ブッシュ再選に抗議する人々 |
サンフランシスコでは選挙翌日におよそ2,000人がブッシュ再選に抗議し、57人が逮捕された。ロスでは9日に連邦政府ビル前で抗議をしていたら、なんと2台の戦車が制圧にやってきた。ハーバード大やコロラドの高校でも「ブッシュが国をまた盗んだ」と抗議活動が始まった。 今のところ騒いでいるのは一般市民とネットメディアだけで、大手メディアが動く気配はない。意識の高いアメリカ人は、今回の選挙で民主主義が根底から崩壊しつつあることに気づいている。「アメリカでは今後も正常な選挙は行われない」という不信感と闘いながら、彼らはあくまで選挙結果の真実を求めている。 旧ソ連の独裁者スターリンは「投票した者が決定できる事など何もない。投票を数える者が全てを決定する」と言った。いままさに同じことが「民主主義」のアメリカに当てはまる。しかし、アメリカのメディアはもちろん、日本のメディアも何事もなかったかのように振る舞い、この件に関しては堅く口を閉ざしている。 "Those who cast the votes decide nothing. Those who count the votes decide everything." |
参考サイト truthout, MoveOn, Solar Bus, Alternet, Blackboxvoting 「金で買えるアメリカ民主主義」グレッグ・パラスト著、角川書店 http://hiddennews.cocolog-nifty.com/gloomynews/2004/11/by_2.html 「暗いニュースリンク」上の邦訳版 TUP速報 参考図表 CNNは出口調査の結果を実際の投票結果に合わせて改ざんした(やってはいけないことだ)。 |
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